Ray.Di
Ray.Di は DI (Dependency Injection: 依存性注入) のためのフレームワークです。Google Guiceにインスパイアされ、Aura.Diを利用したPHP用DIコンテナです。メソッドインターセプターによるアスペクト指向プログラミングをサポートします。
この記事は初学者向けのDIやAOPの解説は含みませんが、1サンプルを通じてなるべく分かりやすく全体構成を説明したいと思います。
ターゲットオブジェクト
インジェクト対象となるメソッドに@Injectとマークします。@PostConstuctはインスタンスコンストラクトされ後の初期化メソッドを表します。@Transactional, @Templateはユーザーが定義したアスペクト指向プログラミングのためのアノテーションで、@Aspectと共に用い、そのメソッドがインターセプトされる事を指定します。
モジュール
モジュールではインターフェイスと実クラスやインスタンス、ファクトリを紐づけるコードを記述します。ユーザー定義のアノテーションはインターセプターと紐づけます。インターセプターはネスト可能でこの例では@TransactionalとマークされたメソッドはTimerとTransactionの機能がネストされて適用されます。
インターセプター
メソッド実行に割り込み、元メソッドの前後の処理をコーディングします。このタイマーインターセプターでは タイマーのスタートとストップの間に$invocation->proceed();として元のメソッドが実行されています。 array(new Timer, new Transaction)と指定することで、タイマースタート、トランザクションスタート、元メソッド実行、トランザクションコミット、タイマーストップと処理がネストされインターセプターに挟まれたその中心で元メソッドが実行されます。
@IT総合トップ > @IT CORE > Java Solution > Java EE 5マイグレーションプラクティス(1)より
Manjesh’s Blog Aspect Oriented Programming and Unity 2.0 より
タイマーインターセプター
トランザクションインターセプター
リフレクションを使い元オブジェクトのプライベートプロパティのPDOオブジェクトを操作してトランザクションを実現しています。
テンプレートインターセプター
連想配列をフォーマットされた文字列に変換しています。
インジェクター
インジェクターを生成し、モジュールをセットして対象のインスタンスを取得します。インスタンス取得時にオブジェクトグラフ(必要オブジェクトのリレーション)が解決され依存するオブジェクトが全て生成(またはレイジーロード可能なオブジェクトを取り出す機能のみを持ったオブジェクトプロバイダー)がセットされ対象インスタンスが生成されます。
モジュールは通常のwebアプリケーションならbootstrapで1回だけ作成します。@Aspectとマークされメソッドインターセプトされるオブジェクトは、Weaveオブジェクトというメソッドがインターセプトされ代理実行されるプロキシーオブジェクトに変わります。元のオブジェクトのメソッドを受付け、元のオブジェクトのように振る舞う代理オブジェクトです。
実行結果
`
Timer start
begin Transaction[“Koriym”,33]
commit
Timer stop:[0.0001919] sec
Timer start
begin Transaction[“Bear”,32]
commit
Timer stop:[0.0001190] sec
Timer start
begin Transaction[“Yoshi”,27]
commit
Timer stop:[0.0001149] sec
Name:Koriym Age:19
Name:Bear Age:28
Name:Yoshi Age:18
`
オリジナル実行
オリジナルのメソッドをそのまま実行した場合する場合のコードと結果です。ターゲットクラスに依存技術がなく、プレーンな形で実行とテストが可能です。
Conclusion
依存オブジェクトが注入される元のクラスには特定のベースクラスの継承や、DIコンテナ等特定の技術に対する依存がありません。利用するオブジェクトや値は全て外部から入力されます。インターフェイスやアノテーションを、クラスやインスタンスまたはファクトトリークラスと結びつけたモジュールを用いて、インジェクターが必要とするオブジェクトを注入 します。
アノテーションでマークされたメソッドはインターセプトされるメソッドと解釈され、代理オブジェクトによってそのメソッドが代理実行されます。各処理を横断的に共有する関心の実行に役立つと同時に、メソッド内の処理を本質的なものと付帯的なもの、それぞれドメインロジック(ビジネスルール)、アプリケーションロジック(認証やロギング)と分離する事にも役立ちます。オブジェクト指向プログラミングの大原則に関心事の分離があるとするとアスペクト指向プログラミングはそれを補完する横断的関心事の分離に他なりません。
この記事ではRayの基本的な使用法の紹介だけにとどめ、DIやAOPの効用や用語、概念の詳しい解説は行いませんでした。またパフォーマンスやこの技術が向いている問題領域、不向きな領域、アプリケーションでの可能性や、現在ある課題にも触れていません。プレビューリリースとして基本機能を簡単にご紹介しました。
DIに関するより良い議論
先日行われたZendConでZend FrameworkチームのエンジニアのRalph Schlenderさんがzf2のZend Diについてスライドを公開しています。zf2のDIだけでなく、特に前半DIについて語られています。素晴らしい内容で、共感する内容も多いです。紹介します。
Try it
ここで紹介したサンプルアプリはこのテストで簡単に実行することができます。ご協力頂ければ大変ありがたいです。現在は簡単な英文マニュアルがあるだけですがkoriym/Aura.Diで公開しています。