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LLMコーディングエージェントの実践: 2025年12月の転換点

Source URL: https://x.com/karpathy/status/2015883857489522876
Author: Andrej Karpathy
Published: 2026-01-26
Archived: 2026-01-27
Type: Thread Summary + Commentary


概要

元Tesla AI Director、OpenAI創設メンバーのAndrej Karpathyによる、LLMコーディングエージェント(主にClaude)を数週間使った生の体験レポート。2025年12月にLLM能力が「何かの閾値」を超え、ソフトウェアエンジニアリングにフェーズシフトが起きたという観察。

主要な洞察

コーディングワークフローの劇的な変化

11月→12月でワークフローが逆転:

「今や本当に英語でプログラミングしている。言葉でLLMにコードを書かせている… 少し気恥ずかしいが、大きな『コードアクション』でソフトウェアを操作できる力があまりにも有用すぎる」

これは20年のプログラミングキャリアで最大の変化であり、それが数週間で起きた。

IDE & エージェントスウォームの現実

「IDEは不要」も「エージェントスウォーム」も、現時点では過度な誇張だと指摘。

エージェントがまだ犯すミス:

「1000行のコードで非効率で肥大化した実装をしてきて、『もっとシンプルにできない?』と聞くと『もちろん!』と即座に100行に削減する」

それでも戻ることは考えられないほどの改善

彼の現在のセットアップ: 左側にGhosttyで数個のClaudeセッション、右側にIDE(コードビュー + 手動編集用)。

Tenacity(粘り強さ)の価値

「エージェントが何かに執拗に取り組む様子を見るのは興味深い。疲れない、落胆しない、人間ならとっくに諦めているところでも試行を続ける。30分後に勝利する姿を見ると『AGIを感じる』瞬間だ」

スタミナが仕事のコアなボトルネックであり、LLMによって劇的に増加した。

Speedup vs Expansion

「スピードアップ」の測定は難しい。確かに速くなったが、主な効果は「やることが増えた」こと:

  1. 以前は価値に見合わなかったものをコーディングできる
  2. 知識・スキル不足で手を出せなかったコードに取り組める

つまり、単なる高速化ではなく能力の拡張

Leverage(レバレッジ)の使い方

LLMは特定のゴールを満たすまでループするのが得意。ここに「AGIを感じる」魔法がある。

命令的(imperative)から宣言的(declarative)アプローチへ:

宣言的アプローチでエージェントがより長くループし、レバレッジが増す。

楽しさとAtrophy(萎縮)

予想外だった発見: プログラミングがより楽しくなった。

「空欄を埋める退屈な作業が減り、創造的な部分が残る。ブロックされることが減り(楽しくない)、勇気が増した(手を取り合って何らかの前進ができるから)」

逆の感情を持つ人もいる。LLMコーディングは『コーディングが好きな人』と『構築が好きな人』でエンジニアを二分する。

一方、手動でコードを書く能力が萎縮し始めていることにも気づいた。生成(書く)と識別(読む)は脳内で別の能力。プログラミングの細かい構文的詳細のため、書けなくても読めるという状態は可能。

Slopacolypse 2026

「2026年はslopacolypse(slop apocalypse)の年になる覚悟をしている。GitHub、Substack、arXiv、X/Instagram、あらゆるデジタルメディア全体で」

AI誇大宣伝の生産性劇場(productivity theater)もさらに増える。ただし、実際の真の改善と並行して。

未来への問い

Karpathyが考えている疑問:

  1. 「10Xエンジニア」はどうなる? 平均と最高のエンジニアの生産性比率は、実は大きく拡大するかもしれない
  2. LLMを持つゼネラリストは、スペシャリストを凌駕するか? LLMは空欄埋め(ミクロ)は得意だが、グランド戦略(マクロ)は苦手
  3. 将来のLLMコーディングは何に似ているか? StarCraftをプレイしているような? Factorio? 音楽を演奏している?
  4. 社会のどれだけがデジタル知識労働でボトルネックになっているか?

コメント

このKarpathyのスレッドが重要なのは、AI研究の最前線にいる人物の生の実践報告だからだ。誇張も悲観もない、実務での具体的な体験。

特に印象的なのは「20年のキャリアで最大の変化が数週間で起きた」という表現。テクノロジー変化の加速度が異常なレベルに達している。

80/20の逆転 — これは単なる補助ツールではなく、主従が入れ替わったことを意味する。人間がエージェントを「補助」する側になった。

Tenacityの洞察は深い。人間の限界(疲労、落胆、時間)がAIには存在しない。これは単なる効率化ではなく、問題解決のが変わることを意味する。人間が諦めるポイントを超えて解を見つけられる。

楽しさの増加 vs スキルの萎縮のトレードオフは今後重要な議論になるだろう。「生成はできないが識別はできる」状態が新しい常態になるのか? これは教育にも影響する。

Slopacolypse 2026の予言も興味深い。質の低いAI生成コンテンツの大洪水。しかし彼は「実際の真の改善と並行して」と付け加えている。ノイズは増えるが、シグナルも増える。問題は識別能力だ。

10Xエンジニアの格差拡大の予測は逆説的だ。AI民主化で格差が縮まると思われがちだが、実は拡大するかもしれない。なぜなら、優秀なエンジニアはAIをより効果的に使えるから。道具が強力になるほど、使い手の差が出る。

最後の問い「社会のどれだけがデジタル知識労働でボトルネックか?」は本質的だ。もしそのボトルネックが解消されたら、次のボトルネックは何になる?


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タグ: #LLM #コーディングエージェント #AI開発 #ワークフロー #生産性

関連トピック: #Karpathy #Claude #Cursor #ソフトウェア開発 #自動化