AIバブルに対するヘイターズガイド
原題: The Hater’s Guide To The AI Bubble
著者: Ed Zitron
出典: Where’s Your Ed At
日付: 2025年頃
アーカイブ日: 2026-02-02
要約
Ed Zitron氏による14,500語に及ぶ生成AIバブルの包括的批判。感情論ではなく、具体的な財務データと市場分析に基づいて、現在のAIブームが持続不可能であることを論証している。
主要論点
1. NVIDIAという脆弱な単一障害点
- Magnificent 7(NVIDIA、Microsoft、Alphabet、Apple、Meta、Tesla、Amazon)が米国株式市場の35%を占める
- その中でNVIDIAは19%を占め、収益の88%がエンタープライズGPU(主に生成AI用)から
- Microsoft、Amazon、Meta、Alphabet、Teslaの5社だけでNVIDIA収益の42.4%を占める
- つまり、米国株式市場の約8%が、5社のGPU購入によって支えられている
2. 巨額投資に対する微々たる収益
2024-2025年の2年間で、Magnificent 7は生成AIに$560億ドルを投資したが、収益はわずか$35億ドル、利益はゼロ。
各社の内訳:
- Microsoft (2025年)
- AI収益: $13B(うち$10BはOpenAIからのコスト価格での支払い)
- 実質的なAI収益: $3B
- 資本支出: $80B
- ROI: 3.75%
- Amazon (2025年)
- AI収益: $5B
- 資本支出: $105B
- ROI: 4.76%
- Google (2025年)
- AI収益: $7.7B(推定、Google Oneサブスク + Workspace値上げ)
- 資本支出: $75B
- ROI: 10.27%
- Meta (2025年)
- AI収益: $2B-$3B(法廷資料からの推定)
- 資本支出: $72B
- ROI: 2.78-4.17%
- Meta収益の99%は広告。LLMから直接収益化している製品はゼロ
- Tesla
- 生成AIからの収益なし
- 資本支出: $11B
- (xAIは月$1Bを燃焼、収益$100M/年)
3. AWS との決定的な違い
「AWSも最初は赤字だった」という反論に対する反駁:
AWSの場合(インフレ調整後):
- 10年間の累積資本支出: 約$67.6B(最大見積もり)
- 2015年に黒字化
- 現在: 四半期利益$数十億
生成AIの場合:
- 2024年単年の支出: $135.7B(Microsoft単体)
- 2025年予測支出: $560B(5社合計)
- AWSの15倍以上の資本支出
- 収益性の見通しなし
根本的な違い:
- AWSはインフラ → 汎用性が高く、多様なビジネスモデルを支える
- 生成AIは機能 → 用途が限定的、単独では収益化困難
- AWSは既存の需要(Webアプリケーション)を効率化
- 生成AIは需要そのものを創造しようとしている(が失敗している)
4. AI企業はどこも利益を出していない
$100M ARR以上の生成AI企業(2025年):
- OpenAI: $10B ARR(数十億ドルの赤字)
- Anthropic: $4B ARR(数十億ドルの赤字)
- Anysphere (Cursor): $500M ARR(大幅赤字)
- Midjourney: $200M ARR(2022年に黒字と主張、現在不明)
- その他12社のみが$100M ARRを超える
Cursorの崩壊:
- 2025年5月: $500M ARRを発表、$900Mを調達
- 2025年6月: Anthropic/OpenAIが価格引き上げ・優先処理プラン導入
- 同時期: Cursorが価格体系を大幅変更、実質値上げ
- $500M ARRは、もはや提供していない価格モデルで達成された数字
5. 「サブプライムAI危機」の始まり
Anthropic/OpenAIの動き:
- 大口顧客(Cursor、Replit等)に対する実質的な値上げ
- 「優先処理」という名目で追加料金を要求
- Cursorは$900Mの調達金の多くをAPI費用の前払いに充てた可能性
これは2008年のサブプライム危機に似ている:
- 持続不可能な低価格で顧客を獲得
- 突然の値上げでビジネスモデル崩壊
- 連鎖的な破綻の可能性
6. アラームは「弱さ」ではない
「優れたジャーナリズムとは、歴史を能動的に捉え、適切に描写・評価し、現状を正確に警告すること。そして私は警告を発している。」
Zitron氏の立場:
- 「悲観主義者」ではなく「批評家」
- 株のショートポジションなし、利益相反なし
- 過去の的中実績: リモートワーク反対キャンペーン、Clubhouse、NFT、FTX崩壊の数ヶ月前に警告
「楽観主義者」のダブルスタンダード:
- AI推進派 = 「市場が真実であってほしいと願うものに同意する人々」
- 批評家は常に証明を求められるが、推進派は証拠なしに称賛される
- 「クリック稼ぎ」「逆張り」と決めつけられる
論評
この記事は、AIバブル批判の決定版と言える。感情的な「AI脅威論」でも、技術的な「できる/できない」論でもなく、資本の流れと収益性という最も冷徹な視点から生成AIブームを解体している。
なぜ重要か
- 具体的な数字: $560B vs $35Bという衝撃的な投資対効果
- 構造的脆弱性: NVIDIAという単一障害点への依存
- 歴史的比較: AWS神話の解体と、生成AIとの本質的違い
- 予測価値: この記事は数年後、「あの時誰かが警告していた」歴史的文書になるだろう
AWS比較の秀逸さ
「AWSも最初は赤字だった」という反論を、インフレ調整後の実数で粉砕している点が見事。さらに重要なのは、AWSはインフラだが生成AIは機能という指摘。
- インフラは多様なビジネスを支える基盤(汎用性)
- 機能は用途が限定的(単独では収益化困難)
生成AIは「汎用的知能」を謳いながら、実際には極めて限定的な用途にしか使えない。そして、その限定的な用途に対する需要が、$560Bの投資を正当化できるほど存在しない。
「サブプライムAI危機」
Cursor/Anthropic/OpenAIの価格変動の時系列分析は、調査報道の域に達している。
- Cursor が $900M 調達
- 直後に Anthropic/OpenAI が価格体系変更
- Cursor が顧客への約束を反故に
これは2008年のサブプライム危機と構造的に似ている:
- 持続不可能な低金利(低価格)で顧客獲得
- 突然の利上げ(値上げ)
- 連鎖的破綻
批評という仕事
Zitron氏の「私はヘイターだ」という宣言は、批評の本質を突いている。
- 批評家は「悲観論者」ではなく、権力と資本に対する懐疑主義者
- 「楽観主義」という名の同調圧力に抗う
- 証拠を積み上げて論証する責任を果たす
Zitron氏は具体例の山を提示しているが、それは批判が持つべき証明責任だからだ。推測や感情論ではなく、財務データと市場分析という客観的証拠に基づいて論証している。
技術者への警告
この記事は投資家だけでなく、技術者こそ読むべき。
- あなたの退職金の35%がMagnificent 7に依存している
- その35%がNVIDIAのGPU販売に依存している
- そのGPU販売が5社の継続的な巨額投資に依存している
- その投資は収益を生んでいない
つまり、あなたの老後がAIバブルの上に乗っている。
日本への示唆
日本のAI議論は「技術的に何ができるか」に偏りがちだが、この記事は「経済的に持続可能か」という問いを突きつける。
経産省の「AI戦略」やスタートアップのAI活用も、結局は米国のこの構造に依存している。NVIDIAが躓けば、日本のAI関連予算も道連れになる。
引用
「私がやっていることは『逆張り』ではない。これは、こうした瞬間に必要な、権力と資本に対する懐疑主義だ。」
「生成AIブームは蜃気楼だ。収益も、リターンも、製品の有効性も、それが重要であるためのものを何も持っていない。あなたが目にしているすべては馬鹿げていて無駄であり、すべてが崩壊したとき、私がこれを書いて何かを言おうとしたことを覚えていてほしい。」
「米国株式市場の35%が、5、6社がNVIDIAからGPUを買うことによって支えられている。」
「AWSはインフラを売っている。あなたが払っているのは計算処理だけではなく、ストレージへのアクセスと、世界中どこにいてもユーザーが快適な体験を得られるよう、低レイテンシでサービスを提供する能力だ。」
「なぜこれらの企業は巨大なデータセンターを建設し、GPUで満たしたのか?」(暗黙の答え: 明確な需要がないまま、バブルに乗り遅れまいとして)
メタ: このアーカイブについて
この記事は長文(14,500語)のため、全文翻訳ではなく詳細な要約と論評を提供した。
読者へのガイド:
- 財務・投資に関心がある → 原文の数字を追う価値あり
- 技術トレンドを追っている → AWS比較セクションは必読
- スタートアップ関係者 → Cursor崩壊の時系列分析を読むべき
- 一般読者 → この要約で十分
保存価値:
この記事は2025年のAIバブルを記録する一次資料として、10年後も参照されるだろう。FTXやTheranos崩壊の警告記事と同様に。
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