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ソフトウェアは死んだ — ソフトウェアよ、永遠なれ

原題: Software Is Dead — Long Live Software
著者: Euclid Insights
公開日: 2026年2月
ソースURL: https://insights.euclid.vc/p/software-is-dead-long-live-software
アーカイブ日: 2026-02-24


要約

「SaaSmageddon」の発端

2026年2月、Anthropicが3週間でCowork・法務レビュー・Excel向けClaude相次いで発表した直後、ソフトウェア株が急落。過去30年で最大の非景気後退期的な12ヶ月下落率(-34%、市場最高値から約2兆ドル消滅)を記録した。

急落の背景(AI一因論への懐疑)

著者はAI以外の要因も整理している:

要因 内容
個別ディスラプション Anthropic・OpenAIの法務・金融向け発表で特定セクターが直撃
ハイパースケーラーのCapEx MS・Google・Meta・AmazonのAI投資額合計$6,600億超への警戒
セクターローテーション 景気敏感株への資金移動(1月の就業者数+13万人が好材料)
規模別ボラティリティ 中小型ソフトウェア株は市場急落時に特に大きく下落する傾向

「SaaSは死んだ」論への反論

最も単純な反論:AIもソフトウェアである。

クラウドで提供されるアプリケーション層のAIは、依然としてSaaS(Software-as-a-Service)だ。EvenUp、Abridge、Harvey、OpenEvidence、Rilla、MagicSchool——いずれもAIであり、SaaSである。AIを「次世代SaaS」と呼べば多くの混乱が解消する。

iPhoneがコンピューティングの終わりではなかったように、AIはソフトウェアの殺し屋ではなく、最大のアクセラレーターだ。

歴史的パターン:パラダイム転換は市場を拡大する

オンプレミスからクラウドへの移行も「エンタープライズソフトウェア大手の死」を予告された。だが実際は:

FORTRANからクラウドまで、「レイヤーコモディティ化サイクル」は常に同じ弧を描く:革新→反発→市場全体の拡大。

真のリスクゾーン(ソフトウェアの全否定ではなく)

著者が指摘する本当に脆弱なカテゴリ:

  1. 超ニッチツール — AIで容易に複製可能な极めて限定的なユースケース
  2. LLMに自然に代替されるSaaS — Chegg、Grammarly、Dragonのような製品
  3. 変革を躊躇う既存プレイヤー — AI機能を同等以上に提供できない遅行者

また「フロントドアリスク」として、エージェントがUI層を掌握し、コアシステムがミドルウェアに降格するリスクも実在する(Box CEO Aaron Levieの指摘)。

ビルドvsバイ:「バイブコーディングで内製化」幻想

エンタープライズが自社で複雑なツールを内製する選択をするというのは「妄想」(Benedict Evans)。総所有コストは依然として購入の方が有利であり続ける。ビルドコストが下がれば、むしろより多くの問題がソフトウェアで解決され、市場は拡大する。

象徴的な逸話: バイブコーディングの旗手であるLovableが、HubSpotの顧客になった。

デジタル化の遅れとタイムワープ採用

多くのバーティカル市場では依然デジタル化が低水準だ。紙→Excel→従来型SaaSを経ずに、直接AIネイティブプラットフォームへジャンプする企業が増える。数十億ドル規模の建設資材企業が三つの異なるERPを抱えながら、新たなVertical AIを積極購入している実例も紹介されている。


論評

本稿はVC系ニュースレターとして珍しく数字と歴史的文脈の両方を丁寧に踏まえた分析だ。「AIによるSaaS消滅論」の感情的な過剰反応に対して、「AIもSaaSだ」というシンプルかつ正確な反論を提示している点が際立つ。

パラダイム転換が市場を縮小させるのではなく拡大させるという歴史的パターンの整理も説得力がある。ただし、著者の「ソフトウェアは死なない」という結論が、現行のソフトウェアベンダー全員が生き残ると言っているのではなく、あくまでビジネスモデルとしてのSaaSが続くという主張であることは読み違えないようにしたい。リーグテーブルの顔ぶれは確実に変わる、という現実にも著者は正直だ。

「コードが安くなれば非コード資産——ドメイン知識、流通チャネル、顧客信頼——の相対的価値が上がる」という指摘は特に鋭い。AIが普及した世界でのソフトウェアの護城河を考える上で重要な視点だ。


タグ: #SaaS #AI #ソフトウェア産業 #VC #投資 #エンタープライズ #市場分析