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あなたは今、100万人のダメな従業員を雇った

原題: You just hired a million bad employees.
著者: George Sivulka(Hebbia 創業者兼CEO)
公開日: 2026年7月
ソースURL: https://www.a16z.news/p/the-next-ai-goldrush-tokens-loops
アーカイブ日: 2026-07-15


要約

Hebbia創業者のGeorge Sivulkaは、逆説から始める。AIは人間の労働を置き換えるはずだった。だが実際に起きたのは逆で、史上初めて、人間はソフトウェア(トークン)より安くなった。そしてAIは雇用を消すより多く生み出している——なぜなら、AIは「管理」を必要とするからだ。

鉄道が近代マネジメントを生んだように

歴史的な補助線が置かれる。1830年代の鉄道ブームで米国の路線距離は10年で120倍になった。だがシステムは壊れた。1841年、単純な調整ミスから2本の列車が正面衝突し死者が出る。複雑さが増すと個々の車掌ではもう安全を保てない。そこで鉄道会社は数十年をかけて、地域ごとに管理者を置き、役割を文書で定義し、報告系統を持つ階層を作った——近代マネジメントの誕生である。それによって鉄道は世界初の10億ドル産業となり、最盛期には株式市場の約60%を占めた。

いま我々は、最悪の従業員にまで事実上無制限の人員と予算を与えた。しかもAIの管理は人間より難しい。AIは機能不全(dysfunction)を一瞬でスケールさせるからだ。

ループ——空回りに金を払う

Sivulkaの中心的な観察は「トークンは労働力のように振る舞う」だ。いわゆる「トークン浪費(tokenmaxxing)」の熱狂は1ヶ月で一巡したが、問題はトークンの量ではなかった。人々が大量のトークンを使うのは、使い方を知らないからだ。AIに文脈(context)を与えられる従業員は100人に1人。残りの99人にエージェント・ハーネスを渡すと、彼らは「ループ(loops)」を生む。エージェントが自分を呼び出して自分を直そうとするのは、人間が最初にタスクを明快に言語化できなかったからにすぎない。あなたはトークンを使うことにトークンを使っている

これは組織の構造そのものと相似だ。大半の労働者は事業に意味ある影響を与えず、各階層で承認を押し、機械を回すためだけの機械に人を足す「歯車」だ——彼らはループしている。「従業員の80%が何もしないのと同じで、トークンの80%も何もしない。ループは新しい帝国建設だ」。

ソフトウェアの約束は破れた

「一度作れば低コストで永遠に動き、監視も要らない」というソフトウェアの約束をAIは破った。何でもできるようになった瞬間、ソフトウェアは何か一つを予測可能にこなせなくなった。トークンを従業員として見ると、AIの美点は次々に条件付きに崩れる——「トークンは人間より正確」だが正しくプロンプトされた場合だけ、「速い」が100回のリトライを跨げば速度に意味はない、「政治をやらない」がトークン支出の帝国を築く、「辞めない」が新モデルとセッションの狭間で死ぬ、「信頼できる」が完璧な書式で自信満々に失敗する。

AIが人間に本当に勝つ唯一の点はスケーラビリティだ。だからこそ誤った管理は高くつく。10Xエンジニアが前の時代の企業を作ったなら、次の時代を作るのは100Xトークンである。一部のトークン(文脈)は労力を桁で削る。「人間は平均するとトークンより安いが、良いトークンはスケールでは安い。その変換を担うのがマネジメントだ」。

政治問題と、唯一の解=eval

ここで政治が絡む。従業員は自分の秘伝(secret sauce)をAIに教えたくない。彼らはこれらのシステムが「助けるため」だけにあるのではないと気づき始めている。Metaでは、AIを成功させる強い動機を持つ株主でもある従業員が、自分たちの文脈が訓練データに使われることに憤っている。部族的知識(tribal knowledge)は何世紀も雇用の安全網だった。誰も無償で自分の後任を育てない。100Xトークンを握る者ほど、それを手放す動機を持たない。「感情的にも構造的にも政治的にも、企業は自らの未来にとって最重要の技術を拒むように配線されている」。

トークンの労働力を管理する最善策は、人間と同じ——「良い」とは何かを定義することだ。政治を免れた唯一のAIユースケースはコーディングであり、その理由は評価基準(evals)が組み込まれているからだ。コードは動くか動かないか。AI収益の99%がコーディングなのはそのためだ。他の領域は、誰かがevalを作って初めてオンラインになる。「企業のeval群は、その企業の最も価値ある資産になる」。OKRが人間の労働力を最適化する鍵であるように、evalは無限にスケールするトークンの労働力を活かす鍵だ。そして二つの企業が同じeval群を持つことはない——evalは競争優位そのものになる。

「変革」を売る次の巨大産業

企業の経済学の底には残酷な真実がある——まだ誰もAIを確実に機能させられていない。シリコンバレーは既存企業に賭けず、「ネオファーム(AIネイティブ・サービス)」に資金を注ぎ、知識経済の21兆ドルのサービス支出を奪おうとしている。だがSivulkaは反対に賭ける。最大のAI資産は既存企業の中にある——すでに機能している差別化されたプロセスと、すでにある流通チャネルだ。ゆえに次の最大の事業はサービス支出を食うのではなく、既存プレイヤーに新種のサービスを売る。「AI変革(transformation)企業」はどんなネオファームより10倍大きくなる。ジェヴォンズのパラドックスが働き、一つの導入は次の十を生む。

例としてPalantirが挙げられる。紙の上では最も「Claudeに破壊されやすい」企業——半兆ドル規模で企業向けにベスポークなアプリを手作りしている。SaaSを投資不能にした論理では、$PLTRはゼロになるはずだ。だがそうならない。Palantirはソフトウェアを売っていたのではなく、変革を売っていたからだ。ただし変革自体も進化した。AIファーストの世界では、それはevalであり、トークンの最小化であり、「プログラムできるほど深く事業を理解すること」だ。「各企業の機微をエージェントに符号化することは、来る10年で最大の経済的タスクになるかもしれない」。

各局面には決まり文句があった。「ゴールドラッシュではツルハシを売れ」→インフラを作った。「Service-as-a-Software」→ネオファームを作った。「インフラはもう十分。サービスももう十分。いま必要なのは、列車を定刻に走らせることだ」。企業を精査し、100Xトークンを見つけ、機能するループを記録し、浪費されている知性を差配せよ。結びはこうだ——「人間はソフトウェアより安くなった。だが、その両方に何をすべきか告げる者は、まだ必要だ」


論評

この論考の推進力は、AIの隘路を「知能」から「管理」へ移し替えたことにある。鉄道が事故と複雑さの果てに近代マネジメントを発明したという史実を補助線に、「トークン=管理すべき労働力」というレンズを据える構成は強い。だが本当に読む価値があるのは、その明快な主張が自分の結論に自分で地雷を仕掛けている箇所だ。

Sivulkaは、企業にとって最も価値ある資産は独自のeval群であり、それは競争優位そのものだと言う。同時に彼は、従業員が秘伝を明け渡さない政治問題を一節費やして描く——「誰も無償で後任を育てない」。この二つは正面衝突する。最も価値があり最も差別化される成果物(=符号化された秘伝としてのeval)こそ、企業が外部ベンダーに作らせることも預けることも構造的に最も嫌うものだからだ。ところが彼の結論は「AI変革企業が次の最大産業になる」——つまり、その最も手放したくないものを外注せよ、と説く。彼は病を正確に診断し、その治療のために病そのものを要求している。

同じ捻れは処方の内側にもある。彼の診断は「タスクを明快に言語化できる人間は100人に1人」だ。だが解(明快なevalを書け)は、まさにその希少な能力を前提にする。治療が、欠けていると嘆いた能力そのものを必要とするのだ。加えて——著者はHebbia、すなわちエンタープライズのAI変革を売る当事者である。この論考の到達点は、彼の会社が占めるカテゴリーそのものの弁護でもある。それは主張を無効にはしないが、「変革>ネオファーム」という判定がこれほど断定的に語られる理由は説明する。

だが、これらの緊張こそが、この一篇を単なるポジショントークから引き上げている。「トークンを労働力として管理する」「evalは新しいOKRであり堀である」というフレームは、具体的な数字が古びても参照される。KBitsにはすでにNadellaの二篇——学習ループと信頼境界の論——があるが、Sivulkaはそれと同じ結論(堀とは符号化された制度知だ)に、経営とマネジメント史の側から到達している。三者が別々の入口から同じ丘を登っていること自体が、2026年のこの主題の重さを示している。


タグ: #ai-management #evals #enterprise-ai #token-economics #george-sivulka #ai-transformation